20代/女性/飲食店正社員(当時) |
【ブラック企業体験談】洗脳で社畜化した私が悪質飲食店を退職するまでの経緯
調理師免許を取り、飲食業界での活躍を夢見ていた私ですが、気づけばただの社畜と化していました。そんな私がなぜ悪質飲食店に入社してしまったのか、どうやって退職できたのかを紹介します。
入社が決まって心が躍る私
調理師養成学校に通っていた私は、幼い頃から料理の腕1つで活躍することを夢見ていました。男性社会で成り立っていると言われる調理の世界で、私なんかがやっていくことができるのだろうかと不安に思ったこともありましたが、それでも諦められず突っ走ってこれたのは、恐らく若さゆえのことだったのだろうと思います。なんとか学校を卒業し、無事に調理師免許を取得した私は、ある企業に入社が決まりました。
その企業は飲食店をいくつか展開している有名企業で、新卒で入社できたことが嬉しかったことをよく覚えています。職場見学に行ったときは、スタッフ全員が気さくで明るい雰囲気だったため「きっとここでなら楽しく働ける」と思い、入社日を心待ちにしていました。
実際に入社してみたときの印象
歓迎の声とともに温かい拍手が贈られ、私は最高の出勤初日を迎えました。きっと私の仕事選びは間違っていなかったのだと思ったのですが、その後少しずつ違和感を覚えるようになったのです。朝礼時、全員で社訓や接客用語を言ったり、店長がスピーチをしたりする時間があったのですが、常に声を出す人は大声なのです。居酒屋のように元気さをアピールする飲食店であれば、ある程度元気よく朝礼をすることは当たり前なのかもしれません。
しかし、私が入ったお店は一般的なレストランで、元気さを売りにするような雰囲気ではなかったのです。ここまで朝礼で絶叫をするのはなぜだろうと不思議に思っていましたが、私にはその場の雰囲気に合わせることしかできませんでした。
不思議な朝礼以外に、私は少しずつ違和感を抱き始めます。収容人数80~100人程度の広々とした店内にもかかわらず、ホールスタッフはたったの3人です。仕事がスピーディーにできれば、人数が少なくても回るのだとのんきに考えていましたが、実際はそのようなことはありません。
3人だけでホールが回るはずもなく、時折キッチンからヘルプに出なければならない場面も多々あったのです。これは明らかな人手不足と言って良いでしょう。新人の私が口出しをすることはできず、先輩や上司に指示をされるままキッチンとホールを行き来する日々を送ることとなりました。
今思うと、ランチやディナーの時間、私は常に小走り状態だったように思います。人手不足だから仕方がないのだと思い続けてきましたが、同時になぜホールスタッフを雇わないのだろうと不思議で仕方がありませんでした。客足が遠のいた後は、キッチンに入って仕込みや掃除の日々で、気づけば1日10時間以上の長時間労働をしていました。
おかしいと思いながらも感覚がマヒしていく
自分の仕事に違和感を感じた私は、店長に相談をしたことがあります。しかし、店長が言うのは「職人の世界は忙しくて当たり前」という返事だけでした。もちろんそれは理解しているつもりでしたが、本当に今の働き方が正しいのかが分からなくなっていったのです。その後も理不尽な働き方が続きましたが、きっとまた話を聞いてもらえないと思った私は、上司にも先輩にも相談できず、言われるがままに仕事をこなしていきました。
そんな日々を続けていくうちに、私は現状が当たり前のように思えてきたのです。調理師だからホールも掛け持ちする必要はないと思うのも、なんとなく私のわがままなのではないかと感じられてきました。そして長時間労働も当たり前、元気いっぱい仕事をするために朝礼で絶叫するのも当たり前、そんな感覚が植え付けられ、私はどんどんマヒしていったのです。
過酷なのが当たり前で理不尽さに気づけない
現代では様々な仕事がありますが、労働基準法などで定められた内容をしっかり守ることができるホワイト企業ばかりではないことは理解しています。特に、飲食業界は職人の世界なので、低賃金に長時間労働が当たり前という昔からの風習もあります。ここで私が弱音を吐けば、女は弱いなどの差別的発言をされる恐れがあると思ったのです。むしろ、私が今感じている不満は、持ってはいけない感情なのではないかとすら感じてしまい、次第に理不尽さを自分のわがままと変換するようになっていきました。
とにかく仕事中心の生活となっていた私は、家族や友人との時間を作ることができなくなりました。しかし、それでも仕事のためだから仕方がないと言い聞かせ、まるで社畜のように仕事のみに目を向ける生活を送っていたのです。
周りの助けがあって初めて気づけたブラック企業の恐ろしさ
そんな私の異変に気付いたのは、一緒に暮らす母でした。入社する前よりやせ細り、いつも疲れた顔をしていた私を心配してくれていたようです。最初は入社したばかりの新人だから大変なのだろうと思っていたそうですが、何年経っても変わらない様子にとうとう痺れを切らして私に声をかけてきました。もしかしたらブラック企業なのではと思い始めたのはその頃からです。
母は一冊の本を手渡してきました。それは、ブラック企業について書かれた本でした。暇を見つけてなんとなく読み進めているうちに、自分の職場のことが書かれているように映り、やっと私は今の職場が変だということに気づきました。現代では、長時間労働や過酷な業務内容を強いられることもパワハラに入ると知った時は、特に驚きました。上司に殴られたことがあるわけではないため、パワハラではないと思っていたからです。
せっかく調理師免許を取っても、これでは宝の持ち腐れだと気づけた私は、名ばかり店長に退職願を提出し、無事退職できました。きっとあのまま働いていれば、正しい働き方が分からないまま年を取っていたことでしょう。今であれば、あの状況が非常に危険だったことが理解できます。テレビで社畜の人々を見ると「なぜ辞めないのだろう」と他人ごとのように思っていましたが、まさに自分がその状態になっていたことに気づけたのは母のおかげだと思っています。
辞めようと思うと、なかなか勇気がいるものです。それでも、自分を守るために自分で決断をしなければならないことも多々あります。ブラック企業が横行している現代、もし身近に同じような経験をしている方がいるのであれば、母のように気づかせてあげられる存在になりたいと思っています。
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